本当の生ハムの定義 (Definición del auténtico "Jamón serrano")
2006年 01月 14日
(ホームページの≪スペインふう家庭料理≫をブログに統合し、記事を持って来ました。記事の年月日はオオヨソです。)

最近日本のメーカーも作るようになった「生ハム」。
いや日本製の生ハムだけじゃなくって、イタリア製の生ハム類も大分色んなところに出回るようになったけど、どちらもスペインの生ハムとは大分違う。

・・・スペインの方がおいしいの、身びいきじゃなくって・・・でも本当においしいスペインの生ハムは日本には入ってこないの、残念ながら・・・

食べ物の話を、それを食べられない人にするのって、なんか気がひける。所詮説明不可能だし…。
でも日本製の生ハムのようなのが「生ハム」なんだと思っちゃう人がいるかと思うと、なんかその誤解を解かなくてはいけないっていう義務感というか、使命感のようなものにかられて、タイトルだけはずーっと前から用意してた「生ハムの定義」。説明に使えそうな例を見つけた気がするので、イザ実行、してみますデス。

先ずスペインでは生ハムのことをハモン・セラーノ (jamón serrano) つまり山のハムと呼んで、普通のハムと区別する。

ちなみに普通のロース・ハムみたいなのは jamón de york (ヨークのハムってこと・・・ヨークってどこよ?)という。余談ながらこれも、スペインの方がおいしいです。日本でハム作りが始まってから結構な年数になると思うけど、残念ながら、日本のメーカーさんたち、未だ追いついてないです。

で本題の「生ハム」に戻るけど、日本のメーカーが作った生ハムって、ひとことでいうと「お刺身」感覚。
つまり「生鮮食料品」。仕方ないか、お刺身の国だから・・・ でもヨソの国のおいしい食べ物の名前を使う時には、その食べ物を知って、それに近づく努力をすべきなんじゃないのか? とも思う。そうじゃなくって新しい食べ物を作っちゃった時には、新しい名前を考えるべきだよ、例えば「刺身ハム」とかね!?
要は「生の」ハムを作っちゃったような感じで、日本人はそれを、例えばスモーク・サーモンなんかと同じような感覚で食べてる気がするんですね。サラダに入れたり、とかして。

だって「生ハム」なんだから「生」でしょーが! って?
違うの。スペインの生ハムは生じゃないの。詳しい製法は知りませぬが、山岳地等比較的乾燥して寒冷な気候のところで何ヶ月も「寝かせた」ものがおいしいとされる、つまりは「保存食」。
それも長期保存のきく、昔っからの、真の保存食なのです。「賞味期限」なんて有って無きに等しい、冷蔵庫なんかに入れておかなくても何ヶ月、或いは何年でも持つ食べ物なのです。
「生」といわれる所以は多分「火を入れてない」ってことだけだと思う。

(こうしてみると、元々スペイン語では「生」なんてどこにも言ってないのに、最初に「生ハム」なんて訳しちゃった人に、現在の「誤解」の責任があるのかも・・・?)

生ハム、つまりハモン・セラーノとなった「豚の足」が天井の梁から何十本もぶら下っているようなバールに近づくと、一種独特の強烈なにおいがしてくる。それは表面がカビで覆われた豚の生足のにおいなのだ。それでも中の「生ハム」はきれいで、カビなんかどこにも生えてなくって、そしてとってもおいしいのだ! 

勿論スペインの「ハモン・セラーノ」にもピンからキリまであって、「あまり寝かせてない」、つまり熟成期間の短い安いハムを買うと、傷んだり、冷蔵庫の中でカビて来ちゃったりしますです。
でもちゃんと寝かせて「保存食」になってるハモン・セラーノなら、少々置いておいても大丈夫。
最高級品とされるのはハモン・デ・ベジョータ (jamón de bellotas) といって、 bellota、つまり樫の木の実などの「ドングリ」を食べて育った豚の足をハムにしたもので、更にハモン・デ・ベジョータと呼ばれるためには飼料の何十パーセント以上がドングリでなくてはいけない、なんてことまで決まっている。

科学的根拠は知らないけど、充分に熟成したハモン・セラーノならアブラミを食べてもコレステロールなんかないと言ってた、スペイン人の友人がいた。余分な油は抜けてしまうくらいの期間、置いとくってことですね、多分。
それから最近仕入れた情報によると、イベリコ豚の脂身って、脂肪の成分がちょっと違うらしい。まあこの辺は、専門家の先生方にお任せしておきませう。

熟成してない生ハムは、ひとことで言うと「しょっぱい」。しょっぱいのにカビて来る。生の上に塩が薄い日本の生ハムは、それより更に早く傷んでしまう。全然「保存食ではない」。
それに引き換え、ドングリをたっぷり食べさせた豚から作った高級「豚の足」を充分に熟成させたものは、塩がなれてしょっぱくなく、なんとも言えない旨みがある。そして「完璧な保存食」。

更に言うと、所謂「生ハムメロン」などにして食べる生ハムはそれほどいいものではない。本当においしい生ハムは「それだけで味わう」、他の味と混ぜたりしたら「勿体ない」、そういう味です。

で最近、この熟成感、「しょっぱくなさ」を説明するのに使えそうな日本の食材を思いついたのですが、それはお正月に食べた「アラマキ」!
そう、鮭の新巻! 新巻鮭!! ほらね、スーパーなんかで「三切れ幾ら」とかで売ってる塩じゃけと違って、新巻の鮭って、塩がなれて、油が抜けて、実においしいでしょ!

どうでせう? こんな比較で、少しは想像できたでしょうか??
(・・・でもウチ、スモーク・サーモンやハラスの方が好きやねん・・・とか言われたらどうしよ? 新巻の鮭は所詮焼いて食べるしなぁ・・・)

実はスペインに居た頃、自宅の近くにスペイン一と言われるほどの高級生ハム農場(養豚場…って感じではないのですね・・・)直営のお店があった。そこで出てくる生ハムは、直営店にしてキロ当たり1万5千円を超えるような超高級生ハム。ちなみに当時、キロ4000円も出せば、まあまあの生ハムが食べられた。
「生肉」扱いで日本への輸入が禁止されていたスペインの生ハムが、法律の改正で、検疫証明をとれば輸入できるようになった頃のこと、この店でコーヒー一杯飲みながら(ワインと生ハムではなく)若いボーイ達と話していたら、その話になった。彼らはスペインではごく大衆的なブランドの生ハムが日本に輸出されて、高い値段で売られているというニュースをテレビで見て、びっくりしていたのだ。
ついでに言うとそのボーイさん達、話の合間に超高級ハモン・セラーノを豚の足から切り取って、ホラ、味見してごらん、というようにコーヒー・カップの横に置いてくれました。そのおいしかったこと!!
私が「ここのハモンも検疫証明取れば日本に輸出できるのに」というと、1人がこう答えた。

「最高級のハモンは、豚にして年間6000頭とか、それくらいしか生産しない。わざわざ検疫証明を取って輸出するほどの量は生産できないんだよ。」・・・納得。

だからね、日本では最高級の生ハムは普通じゃ食べられない。でもスペインに行って食べてみたいという人がいたら、内緒でお教えします。どこに行けば食べられるか…?

余談ながらハモンというのは豚の「後足」、つまり腿をハムにしたもの。肩のあたりから前足の付け根をハムにしたのはパレータ (paleta) といいます。(2006年1月)
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by peque-es | 2006-01-14 12:43 | スペインふう家庭料理
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