お稲荷さん
2006年 07月 23日
…て「いなり寿司」ではなくって、狐をご神体として祀るアレです。
母の実家には、このお稲荷さんの祠が、私が物心ついて以来ず〜っとあったのですが、そのお話です。

後から聞くと私の曽祖父にあたる人が、あるきっかけから信仰して、庭に祠まで作って祀ってあった「ご神体」。
小さい頃の私は、どこのおばあちゃんの家にも「そういうもの」がごく普通にあるものだと思っていた。

多少大きくなると、どうもそういうものではないとは分かってきたけど、とにかくずっと自然にそこにあったものなので、どういう由来があるかとか、考えた事もなかった。

私が小さい頃は、年に一度くらいは祖父母の家に、何日か泊りがけで行った。
そういう時、朝起きて台所に行くと、おばあちゃんは前日お稲荷さんにあげた水とお米を持って来て、それを新しいお米と水に取替えて用意している。おじいちゃんは新しいお米と水をお稲荷さんにあげて、お参りしてから出かけて行く。昨日あげたお米はお昼の茶粥の一部になる。…というのが日常の光景として、毎日繰り返されていた。

そしておばあちゃんは、家族の病気だとか、孫の受験だとか、それから私がスペインに旅立つ日とか、とにかく何か事あるごとに、お稲荷さんに向かって無事を祈ってたわけですね。

そのお稲荷さんが、もう10年以上も前になるだろうか、私がスペインに住んでた間になくなってしまった。



その経緯は…

祖父母と同居していた叔母は若い頃から手芸を教えている。毎年年末になると、翌年の干支のマスコットのようなものをフェルトで作って、お弟子さん初め色々な人にお年始として差し上げる。私も毎年貰います。マスコット作りを手伝った事もあるし…既に型紙通りに切り抜かれたフェルトのきれと、目玉などがセットになってる、手芸キットのようなのがあるのです。

で叔母はそれを百個とか二百個とか、或いはもっと? とにかくい〜ぱい作って、出来上がったものをお稲荷さんに捧げてから皆さんに配る。するとある年、手芸の若い生徒さんの中に、お祖母さんに霊感がある、という方がいて…

孫が貰って帰った干支のマスコットを見て、そのお祖母さん、「こんな勿体ないものをいただく訳にはいかない」と仰ったそうです。神秘的なところも何もない、フェルトの小さいお人形で、お稲荷さんに捧げてからというような説明も、わざわざしてなかったと思うのだけど…

「いただけません」「そんな事仰らずにどうぞ」というようなやりとりを経た後で、とにかく一度そのお稲荷さんを拝ませて下さいという事になって、祖母の家まで行かれたそうです。当時祖父はもう亡くなっていたと思う。

そしてお稲荷さんの前で拝むうちに、霊感のあるその方に、お稲荷さんが乗り移られたようなのです。

祖母はあとから、その時の話をする前には必ず、「あんたら若い人は、こんな話、信じへんかもしれんけどよ…」と前置きを付けた。うちのオバアチャン、普段あまり古臭い事は言わなかったし、かなり歳をとるまで、ヨソのオバアチャンに比べると、ずっと元気でしっかりした人でした。

祖母や叔母たちの話を要約すると、叔母のお弟子さんの霊感のあるお祖母さんは、お稲荷さんの祠の前で一種のトランス状態に陥って、全然違う男の人の声で喋り始めたそうです。

…今までよう世話してもろたけど、わしももう歳やし、疲れたよ、伏見のお山に帰りたいよぉ…って。

歳の割に合理的なところもあった祖母、そして叔母たちは、この光景を目の当たりにして、考え込んでしまったそうです。そりゃそうだよね。

伏見のお山というのは稲荷信仰の総本山? 京都の伏見稲荷のことですね。
でそちらに問い合わせてみると、ご神体を返しに来る人というのもたまにいて…という事は、お返しする事もできるらしい。
祖母と叔母たちで考えた挙句に、やはりお稲荷さんが帰りたいと仰った「伏見のお山」に帰っていただく事にして、叔母たちで電車に乗って持ってったそうです。
そうしたら伏見稲荷には、お稲荷さんの戸籍台帳のようなものがあって、おばあちゃんの家の庭に祀ってあったお稲荷さん、ちゃんと名前があるのですが、それが何年の何月何日、どこのたれべえに授ける(って動詞でいいんでしょうかね?)…というような事が、ちゃんと書き留めてあったそうです。

おばあちゃんが上の前置きを言うたんびに、私は「そんなことないよ」って答えた。
だって信じるも信じないも、おばあちゃんが私にウソをつく理由、どこにもないし。
世の中には分からない事、説明のできない事がいっぱいある。だからと言って「そんな事は起こらない」と決めつける根拠は、更にない。
祖母や叔母たちが「事実」として受け止めたものを、そのまま受け止めるだけ。

それに「歳をとって疲れたから伏見のお山に帰りたい」と、関西弁で訴えた神様、私は好きです。

いつもそこにあったお稲荷さんの祠がなくなった庭は、ちょっと淋しい。
祖母は生前会うたびに、「お稲荷さんはもうのうなったけど、伏見の方向いて、拝んでるんやで」と言っていた。私がスペインから帰って来たり、又出発する日には必ず…
私も初詣などでお稲荷さんに出っくわすと、ついお賽銭をあげてしまいます。

ちょっと身辺が慌しいので、暫くブログをお休みします。コメントへのお返事も遅れがちになるかと思いますが、落ち着いたら必ず書きますので、よろしくお願いします。ぺけ。
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by peque-es | 2006-07-23 23:35 | その他、色々、なんとなく…
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